さて今回も、前回に引き続き、理論偏重ではない「使えるコンサルティング」「実効性のある研修」を柱としたコンサルティング・グループ HRインスティテュート社の著作。
戦略とは、「フォーカス&ディープ!」つまり、「勝つための明確なる特徴づけ」と定義している。
勝つために、何かに特化して、そこを深めること。それが戦略。いわば「捨てること」を意味している。市場では何かに特化して深めなければ勝ち残ることができない。捨てるものを決めて、自らが得意としたり、本気で取り組もうと決めた市場に対して、限られた経営資源を、徹底して注ぐこと。それが戦略である。
そして本書では、戦略立案までの道を3つのステージに分けて紹介している。
(1)経営の軸となる「ミッション」「ビジョン」を明確にする
(2)短期、中期、長期の観点で、ビジョンを実現するための「ロードマップ」を描く
(3)経営資源を統合するための戦略を立てる「フォーカス&ディープ!」
つまり、「ミッション」「ビジョン」「ロードマップ」を描いてから「戦略」を立てるということ。
この様に、どうやって戦略を立てるのかから、どの様なシナリオで実行に移すのかまで、その基礎知識と実践方法を分かりやすく解説している。
本書で、特に興味深かった内容は、「戦略シナリオ」について。
戦略シナリオとは、「戦略のシナリオ」のこと。
具体的には7つの種類のシナリオがある。
- 企業ビジョンシナリオ
- 企業戦略シナリオ
- 中期経営計画
- 事業戦略シナリオ
- 部門戦略シナリオ
- 部門別中期経営計画
- 商品別戦略シナリオ
特に、企業戦略シナリオは、本書でいう「戦略シナリオ」の本丸と設定されている。企業ビジョンと企業ビジョン実現のための戦略、そして戦略実現のための計画までを統合的にまとめたものである。
戦略をシナリオ化するメリットは、戦略をシナリオ化することで、現場の人にもわかりやすい、現場が実行しやすいことが挙げられる。そして、結果的に目標が達せされる。
戦略シナリオは、いうなれば現場社員にとっての台本。いい役者を活かすも殺すも台本次第である。
戦略シナリオ構築は、以下の7ステップである。
(ステップ1)環境分析
↓
(ステップ2)戦略目標の設定
↓
(ステップ3)戦略体系の構築
↓
(ステップ4)戦略〜計画への落とし込み
↓
(ステップ5)計画〜目標管理への落とし込み
↓
(ステップ6)事業収収支シミュレーション
↓
(ステップ7)マイルストーンの設定とシナリオ修正
この戦略シナリオの成功例として紹介されているのが、「Hot Pepper」。
「世の中のために、
あなたの愛する街を元気にするために、
街に生活する人たちがこの街を楽しむ笑顔を見るために、
掲載いただいたお店が集客でき、喜び、ありがとうといっていただけるために、
誰もしらなかったこの街で『Hot Pepper』がブームになって街を埋め尽くす。
自分たちのチームが力を合わせてそれを実現する、
誇りに思える仕事と仲間を手にいれて、
あなたは人間として成長していく。
縁あって、この物語にあなたは出会えた。
しんどいけど楽しい、苦しいけどおもしろい。
さあ、冒険にいこう」
「まずは飲食コンテンツに集中する。半径2キロのコア商圏でNTTデータの飲食件数のうち15%を獲得すれば、読者のマインドシェアが獲得できて、流通段階でみんなが自ら喜んで手にとって持ち帰るインフラができる。その流通インフラが確率できれば、一気に効果のある媒体になれる。
その後に、美容室、キレイ、スクール、リラックゼーション、ショッピングなどのコンテンツに展開を拡大する。そして、街の生活情報誌になる。そのために、半径2キロにある街の飲食コア商圏内の飲食店へ、特に居酒屋へ営業に行く。1/9スペースを3回連続で受注する。1人1日20件の訪問を実行する」
この戦略シナリオには、前述のミッション、ビジョン、ロードマップ、そして戦略のすべてが織り込まれている。
このシナリオを現場に浸透させるべく、朝礼や上司とのコミュニケーション、会議などで繰り返し共有する。そうすることによって、あとは行動すれば結果が導かれ、その積み重ねが目標の達成を実現することになる。
ここまで、具体的に、そしてイメージしやすい内容でシナリオ化する。そうすることで、本当に数字に意思が芽生えた様な感覚になる。これが、戦略シナリオの不思議な力なのだと思う。
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