新しいプロジェクトが始まるとき、顧客は、素晴らしい成果を思い描き、その成功を期待します。
そのプロジェクトを請け負うシステムエンジニアも同様に、顧客の期待に応えるため、また、自分自身のためにも、最高の成果を挙げようと思うものです。
ところが、実際にプロジェクトが始まるや否や、その想いは、数々の困難に直面します。
納期までの残された時間、スタッフの能力や人数、顧客の社内の制約条件など、
どれをとっても理想通りにいくわけもなく、顧客もシステムエンジニアも、プロジェクトが始まったその瞬間から、何かを諦めていくことを求められるものです。
従って、当たり前のことですが、プロジェクトを成功に導く唯一の選択は、すべての仕事に優先順位をつけていくことなのです。
しかし、開発側にとっての優先順位と、顧客側にとっての優先順位が違うという、難解な問題も含んでいます。
今回は、顧客側との意識の摺り合わせは横において、開発側だけの問題について考えてみたいと思います。
開発側のシステムエンジニアにとって一番先に解決可能なことは、自分のこと、つまり、開発側の「コスト」であったり「時間」であったりするわけです。
ましてや、自分自身の時間の使い方については、
一番先に解決可能なことなのです。
ところが、システム開発において人を使って実行していく為に、「様々なことを決断していく」ということは、リーダー自身に精神的にも肉体的にも、かなりの重労働を課する仕事です。
ましてや自分が、「重要だけれども、どうして良いか分からない」問題にかまけている間に、チームスタッフたちの作業がどんどん遅れてしまうことが見えてきます。
そこで、若手SEにとっては、簡単なこと、出来ることから作業をしていくことが、目先の生産性をあげるために必要だと思えてきます。
確かに「できることからやる」というのは、スケジュールを遅らせないためには、唯一の方法であるかのように思われます。
しかし「できることからやる」ということにのみ集中してしまうことは、絶対に許されません。
中長期的に見れば、「重要なことを後から決断する」というやり方はリスクが大きく、
取り返しのつかないような工数で、後に修正を強いられる原因にもなるものです。
迷っている状態で走り始めるべきなのか、それとも無理やりに決めて走り始めるべきなのか。
どちらかが正しいというわけではありません。
決めることは、怖く、つらい作業なのかもしれません。
時に、顧客が決めてくれることだけを待っているSEには、自分達の問題さえ、まるで誰かが決めてくれるのを待っているように見えるときさえ感じます。
直感で感じることもSEの大事な資質であると知ることです。
もちろん、その前には、考え、考え抜いて、人にも相談し、情報を集めるという作業が伴う必要があるのは当たり前です。
しかし、最終的には、捨てる物は捨て、決めなければいけないことはきっちりと決めることが「SEの仕事」なのです。
それが「仕事」ともいえます。
全てのシステムに同じ時間が流れているわけではありません。
しかし、プロジェクトに臨むリーダーの態度は、同じものが求められています。
余裕はない、だが実行すれば、終わる。
実行することは、決断することである。
決断して、実行する。
するべきことを正しく選択し、実行し続ける。
そして、しなくていいことを正しく選択し、顧客に理解を求め、部下に指導し続ける。
正しい方向に進んでいるかどうか、必ずレビューとスポットチェックで確認する。
「決断しなくて実行することほど、悪い手はない」ということを、SEは常に意識するのです。
Vol.00130