SEに成り立ての頃でした。
お客さまとの打ち合わせにおいて、システムにおけるデータの流れを全部把握して、お客さまからの質問や要望に即時で回答できる先輩を見て、感動したことを覚えています。
その頃の自分といえば、一つの帳票の出力順や項目の意味を考えることがやっとの段階でした。
常に自分の未熟さを痛感し、どうしたら幅広く、かつ奥深く考える力が付くんだろうかと思ったものでした。
一体どうしたら、システム全体を頭の中に入れることができるのか、そしてそれを、どうやって学べばよいのかも分かりませんでした。
何年かのキャリアを経て、やっと分かってきたことは、システムの考え方には「王道が存在する」ということでした。
どのシステムも違うようでありながら、設計する場合の一つの基本線は、みな同じであると気づくわけです。
では一体、「王道」とは何なのでしょうか。
「常にシステム全体を意識すること」
これは、あらゆる側面からシステムを眺めることができるか、語ることができるか、ということなのです。
同じストーリーを、時間帯をずらしたり、別々の登場人物を主人公として見せる映画を、皆さんは観たことがあるでしょうか?
実は、私の大好きな宮藤官九郎さんという脚本家が得意とするやり方です。
主人公は一人だけではなく、ある場面で脇役だった登場人物でも、別の場面では主人公になって、ストーリーを展開するということが多いのです。
それぞれの瞬間においては、そのストーリーは自然であり、主人公である人物から観た主観となって表現されます。
そしてそれは、システムにおいても同じなのです。
入力画面においては、その画面の果たす役割を意識し、一番重要な役割に特化して活躍させるのです。
帳票においては帳票の果たす役割、例えば日に一度、締めてから出力されるのか、いつでも好きなとき(例え、月次締めの最中であろうとも?)に出力できることが必要なのか、といった、個々の役割を深く意識するのです。
しかし、システムというのは、全体の流れ、各機能の係わり方が重要になります。
そのため、データの流れを意識することが必要になります。
全てのデータは、どこかで入力されて(生まれて)、どこかで更新され(教育され)どこかで何かを出力し(働き)、そしてやがて消去される(死んでいく)。
という、人の一生やドラマと同じなのです。
システムは、人が複数集まって関係性を持ち、成果を出す会社と同じく、機能が複数集まって関係するものなのです。
どんな人にも役割があるように、どんな画面にも帳票にも、そして項目1つにも役割があるのです。
彼らを舞台に登場させて、そのキャラクターを生かし活躍させ、退場させることが、SEの仕事なのだと思ってきたのです。
そう思って、仕事を楽しんできたのです。
Vol.00132