当社ではシステム開発を専門で行っているわけですが、専門が故に、「思い込み」や「先入観」といったもので頭が束縛されてしまっていることがあります。
例えば、「こうあるべき論」とか「理想の形」といったものがあります。
しかし、「それは本当に理想の形なんだろうか?」ということについて、今までどこまで熟考したことが、あるいは、されたことがあるんだろうかと疑ってみることも必要です。
設計手法やチームビルディングでは、大きな理想・目的といったものも必要ですが、細かなことを1つずつチェックし、最適化していくことも役に立つのだと信じています。
では、今回から数回にわたっての課題は「番号」です。
コードと読み替えてもOKです。
コードといえば、わたくし自身、若いときに「取引先コード」で失敗した経験があります。
とにかくその当時は、業務をシステム化するのが初めてといったお客様が多かったのですが、販売管理を発注して下さったお客様から、「得意先コード」をどうナンバリングしたらいいのかといった相談を受けたわけです。
当時、わたしの頭の中にある「コード」とは、あくまでも、「一意のためのもの」にしか過ぎませんでした。
例えば、「頭1桁の"1"は得意先分類、といったような意味を持たせてしまうと、いつかはコード体系が破たんする」という考えが先にきてしまいました。
「得意先分類」や「●●区分」は、得意先コードの体系中に含まれてはいけないと信じきっていました。
得意先管理表を印刷する場合は、金額の多い順や名前順に印刷する方法もあることですし、「得意先分類別」といったような形で印刷すればいいからと考えたのです。
「コードに意味を持たせる必要はありません。適当に付けて下さい」
SEからそんな冷たいことを言われたお客様は、一生懸命考えて取引先グループごとに分けて、「100000~は、このグループ」といったように付けていったようでした。
もちろん得意先コードがシステムの裏側でだけ役に立つのであれば、そういったアドバイスも有効だったでしょう。
しかし当時は、売上伝票を入力するのに、得意先コードを、「得意先名」ではなく「コード」で入力することが必須でした。
名前で照会する画面を作るほど、システム開発の生産性は高くなく、お客様の予算の中ではコード入力、コード範囲指定での印刷が通常だったのです。
そこで、手書きした売上伝票に得意先コードを記入してから、画面入力をする必要がありました。
現場で使ってみれば、毎日毎日、番号チェックをして記入していくので、番号を暗記してしまうお客様がいらっしゃいます。
そうです、頻繁に売上がある「上得意先様」です。
そこで、上得意先の番号をきちんと分かりやすい番号に決めていくといったことも考えられます。
最初に私が考えたように、「コードに意味付けをしたら破たんしてしまう」というものだとしても、コードに振る番号に意味を持たせることは、実際には、とても重要でした。
なぜなら、意味づけされているコードは覚えやすく、また、コード表からの検索も一瞬でできるからなのです。
特に、一覧表や元帳といった帳票系では、得意先分類や区分の次の、第2ソートキーとなるのが「得意先コード」ですから、それも考えるべきでした。
5年後、10年後に取引先が増えて、コードの意味づけが破たんするかもしれないからといって、最初につけるコードが何でも良いわけではなかったのです。
現場の担当者に対する思いやりに欠けていた自分を思い出すたびに、情けない申し訳ない気持ちになるのです。
Vol.00157