開発側(ベンダー)が考える「システム要件」と顧客(ユーザー)が考える「システム要件」の違い、これが先週お約束した今回のテーマです。
ユーザーは、システム要件をどのように考えているのでしょうか。
確実に言えることは、ユーザーはシステムを使うことによって
・今以上に便宜を得たい
・利益を得たい
と考えています。
具体的には、
・在庫を減らす
・人手を減らす
・ミスを減らす
・顧客満足度を上げる
といった目的もあるでしょう。
しかし、ユーザーにとってシステムを使うことの最終目的は、企業の利益の追求です。
一方、ベンダーの最終目的も、ユーザーの利益の追求なのでしょうか?
もちろん、そう考えていることには間違いはありませんが、残念なことに、ベンダーにとって一番大事なことは“プロジェクトを赤字にしないこと”なのです。
そのため、ベンダーはシステム要件定義書を作成するにあたって「ユーザー側が描いた理想のシステム」の実現の不可能性についてとうとうと説得を始めるのです。
そして、技術レベルを自分たちの能力で楽々と作成できるところまで落とし、時間と人の制約の中で、実現可能な提案をする、これがベンダーの作成するシステム要件定義書なのです。
結果として、受注後の最初の納品物である「システム要件定義書」は、提案書とイコールのものであることは滅多にないのです。
もし、提案書とイコールであっても、金額がイコールではないのです。
つまり、提案書の金額のまま、システム要件定義書が顧客の要望を網羅していることは非常に少ないのです。
なぜなら、提案書を作るときにベンダーの頭の中にあることはいかに競合相手に勝てる金額を提示するかだからです。
また、その金額におけるプロジェクトの詳細は、ベンダーが勝手に描いたものなのです。
これらの思惑から作成されたシステム要件定義書が、曖昧でどのようにでも解釈できるものなら後々、大きな問題を引き起こすことになります。
例えば、開発途中にベンダーからユーザーに対して金額交渉が入るなどです。
実際に、裁判などでベンダーとのトラブルに至るユーザーは、自分たちが最重要だと考えていることを、ベンダーが当然実行してくれるものだ考えていますが、これは違います。
ベンダーは、自分たちが最重要だと考えていること(例えば、打ち合わせをしっかりしようとすればするほど比例して経費がかかること)をユーザーにはなかなか伝えません。
ユーザーがこういったことを簡単に受け入れてくれない、説明するのは難しいとベンダーは思うのです。
結局、システム要件についての問題は、明らかにベンダーが曖昧に対応し続けることがトラブルとなり裁判となるのです。
自分たちが、誇りをもってシステム開発を行っているのであれば「システム要件」をユーザーの視点できちんと開示して固めることが必要です。
それがユーザーにとっては厳しい現実でも早めからきちんと丁寧に折衝しなければいけません。
それでも、プロとして「挑戦」すべきシステム要件には、逃げないで立ち向かう覚悟と度胸が必要ですし、どんなリスクが起こりうるかについてはユーザーの視点でユーザーにわかるように説明する責任があります。
無責任に「なんでもできる」と言って、契約してから考えよう、後から「うまく金をとろう」などというトンデモナイ営業方法は今の時代には、ハイリスク以上のリスクであり確実にシステム訴訟の種となるのです。
しかし、今やベンダーにとって悪夢の時代がやってきました。
開発費3億円を、1億円でやらざるを得なくなってしまう・・・。
次回は別の視点から契約について考えてみます。
Vol.00184