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「工事進行基準」になった背景

来年、2009年の4月から、システム開発会社も「工事進行基準」会計を求められるようになりました。
日経BP社やマイクロソフトなどで、工事進行基準に関するセミナーが大流行です。
そこで、今回は「工事進行基準」について考えます。

これまでの会計処理は、「工事完成基準」会計でした。
つまり、システムが完成して、納品、お客様の検収により、売上計上してきたわけです。

もちろん、すべてのシステムやプロジェクトにおいて、作業開始から終了、売上日までが、1年間という会計期間の中に、きれいに収まってしまえば、特に問題になる処理はありません。

しかし、すべてのプロジェクトが、期末に終わっているということは、あり得ないわけです。

この場合、売上できないプロジェクトについて、つまり、当期中に売上しないプロジェクトに掛かった労務費(SEやプログラマの給料)は、仕掛品という、在庫と似た意味の、資産勘定科目を用いて計上し、売上原価とはできませんでした。

こういう会計処理を行うと、通常は、売上月(期)に多くの利益が出ることになります。

なぜなら、2年掛かりのシステム開発では、最初の期は、売上も売上原価も発生しません。
ひたすら労務費という費用がそのまま、仕掛品という資産に代わっているだけです。
それが、売上期には、売上金額が全額計上され、仕掛品が売上原価に振替えられるからなのです。

実際には、企業の経営といった側面から見れば、売上のタネは労務費だけではありません。
技術者の教育費、福利厚生費用、水道光熱費であったり、家賃であったり、営業費用なり、そのプロジェクトが、分担すべき販管費は、もっと多くあるのです。

売上を計上した期に、その売上を生んだ元となる直接の費用と、間接の費用すべてが計上されてこそ、正しい会計となるわけなのですが、そうなっていないわけです。

そこで、大規模なシステム開発があった場合には、特に利益が正しく計算されない、ということになってしまうのです。

単純に考えれば、最初の期は、利益が少なく評価され、次の期の、売上があった期に利益が過剰に評価されるということです。

しかし、システム開発では、プロジェクトによっては、納品後(検収後)に多くの問題が出ることもあるわけです。

この場合、例えば、3期に渡るプロジェクトについて、考えてみましょう。
1期目は、仕掛品計上のみなので、利益が少ない状態、2期目は、期末月に売上があったとすると、利益が大きく出る状態となります。

そして、翌月から、納品後のトラブルに追われてしまったとなると、3期目は、売上のない、原価の垂れ流しということになります。

これだけが原因というわけではないのですが、こういった会計では、外側から見た場合に、この企業が優良なのかどうかが、わかりにくくなるわけです。

また、この売上や利益の構造が良くわからないことを逆手にとり、「売上や利益をごまかす」といったことが、上場企業でも行われていることが何件か発覚しています。

・ニイウスコー
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008050102007972.html

・アスキーソリューションズ
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080428AT1G2700P27042008.html

・アクセス
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080428-OYT1T00347.htm

一方、システム開発の仕事と、非常に似ていると言われる建設業界では、「工事進行基準」の会計が、ずっと行われてきているのです。

そこでIT企業が、投資家から、「正しい企業の業績」を判断されるためにも、グローバルスタンダードである「工事進行基準」での売上処理が求められているというわけなのでしょう。

下請だから関係ないとか、小さな案件の仕事しか行っていないから関係ないというわけではなく、わたしたちの業界の仕事が、どのように会計処理されるべきなのか、その為には、どのようなプロセスを経て、作業をしていかなければならないかを知り、実行していくことは、緊急に求められていることなのです。

Vol.00143

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2008年05月13日 11:30に投稿されたエントリーのページです。

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