2007.07.31

出身地中国大連市のソフト産業の現状

 大連、日本向けソフト開発の一大拠点 オフショア、情報サービスが急成長

 人口約590万人を擁する中国東北部の大連市。経済発展を続ける中国の中でも最初の「ソフトウエア産業国際化モデル都市」として認定され、いま世界中のIT(情報技術)企業が熱い視線を注いでいる。とくに日本向けのオフショア(海外企業へのソフト開発委託)や情報サービスのアウトソーシング業務がここ数年の間に急成長している。中国における一大ソフト開発拠点として存在感を高める大連の現状を報告する。

 大連国際空港から海側に車を走らせること約20分。ここに大連市が目指すソフト産業の国際化のシンボルともいえる「大連ソフトウエアパーク」がある。1998年に民間企業の主導で始められたプロジェクトで、すでに第1期工事がほぼ終了し、現在第2期への本格着工に移りつつある。

 第1期プロジェクトにはこれまでIBM、マイクロソフト、ヒューレットパッカードをはじめ、日本からもソニー、松下、日立、オムロンなど世界の名だたるIT企業がビルやオフィスを構え、国際的な企業379社が入居している。

 第2期プロジェクトの利用土地面積は約8・6平方キロメートルと第1期のほぼ3倍の広さ。総投資額は150億元(約2325億円)になるという。大連ソフトウエアパークでは、2008年までに100億元の年間売上高を目指す。

 ≪売上高50%増加≫

 日本企業は全体の27%。大連のソフト会社などとオフショア開発を展開、およそ90%が日本向けの業務だ。最近は会社の業務部門の一部またはすべてを委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という情報サービスを中国企業と結ぶケースも増えている。

 「06年のソフト開発、情報サービスの売上高は前年比45%増の145億元。日本向けは50%アップ。今年の上半期も同じ傾向にある」。大連ソフトウエア産業協会の孫鵬・常務副秘書長はこう指摘する。大連のソフト会社は約600社。このうち日本向けの開発を手掛けているのは200社強という。孫氏は「日本向けオフショアでは大連は実績のある地域。今後のニーズに応えるためにも、協会としては人材の協力関係、情報セキュリティー、品質向上そしてマーケットの拡充に重点的に取り組んでいく」とも話す。

 人材については対日業務教育の育成に着手、経済産業省が策定したIT産業における人材のスキル体系である「ITSS」に対応した“大連版ITSS”をスタートさせた。また定年退職した日本のシルバー人材の導入も検討しているそうだ。個人情報保護についても日本のPマークに相当する認証制度「PIPA」を開始、昨年10月に取得第1号を登録するなど、日本からの高いレベルでの開発要求に業界あげて対応を強めている。

 ≪人件費など課題≫

 課題もある。「ひとつは人件費の高騰。もはや無視できない状況にある。そして知的所有権問題」(孫氏)。人材育成や技術力向上と違い、ソフト業界だけで解決できない問題だけに悩ましいところだ。

 増大する日本向けのオフショア、情報サービス業務。発注者側とのトラブルも少なくないとも聞く。中国のソフト業界が高まる顧客ニーズにいかに対応できるか、中国のソフト産業をリードする大連のソフト会社の役割は小さくない。

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