今週のアイロベックス

ソクラテスの弁明について

今回は、久し振りに哲学について書いてみようと思います。
大学では哲学を専攻していたため、
「今週のアイロベックス」でも何度か書いていたのですが、
最近は書いていませんでした。
考えてみると、大学生活の年数よりも、
アイロベックスでの勤続年数の方が長くなっているわけで、
知らず知らずのうちに、哲学書は読まなくなってしまいました。
原点に立ち返り、
「ソクラテスの弁明」を再読してみましたので、
今回は、この本をご紹介しようと思います。

プラトンの「ソクラテスの弁明」という著作は、
私の大学では、哲学科に入学した1年生が必ず読まされる本の一つでした。
前提知識なしでも読むことができ、なおかつ短く、
哲学の本質的な部分に触れられる、まさに古典的な名著であり、
必読書といえるでしょう。

ソクラテスという人は、有名な哲学者ですが、
実際には著作を一つも残していません。
弟子のプラトンが、書物にあらわしたものが、
ソクラテスの思想として伝わっています。

ソクラテスは、本を書かなかったのにも関わらず
哲学者として名を残しています。
それでは何をしていたかというと、
人々と対話が、彼の方法でした。
自分から何か結論を述べるのではなく、
相手と話していくにつれ、
対話を通じて結論を導いていきます。
この方法は産婆術と呼ばれており、
相手が知っていると思っていることを、
実は知らないのだと、暴露することになります。
そのため、自分で智者だと思っていた人々には
憎まれることもあり、ソクラテスは告発を受けてしまいます。
そういうわけで、この本では
「青年を堕落させ、国家の信じる神々を信じない」
という罪で告発されたソクラテスが、
裁判の場で弁明する様子が、描かれています。

ソクラテスといえば、有名なのが「無知の知」です。
この著作でも、その点について語られています。

ことのおこりは、「ソクラテス以上の賢者は一人もいない」という神託があったことです。
彼自身は、そんなはずはないと思い、様々な賢者と呼ばれる人を訪ねてまわってみたところ、
確かに自分よりも、様々な知識を持っている人たちはいることはわかりました。
けれど、彼らは自分たちが他の様々なことについても、知識を持っていると思っており、
「知らないということを知らない」のです。
その点において、ソクラテスは他の者たちよりも、智恵があると考えられるのではないか。
これが、「無知の知」です。
知らないとわかっているからこそ、知らないことを探求できる。
この点に、哲学の出発点を見いだせるのではないでしょうか。

堂々と思うところを述べたソクラテスですが、
この裁判の結果では、あまりに正直に持論を述べたため、
心証を悪くし、有罪となり、死刑が宣告されました。

書籍では、同時に「クリトン」という対話編が収録されており、
こちらは、死刑が決定したソクラテスに対し、
旧友のクリトンが逃げるようすすめる話です。
ソクラテスは、それでも逃げないのですが、
なぜ逃げないのかを、クリトンとの対話から導きだしていきます。
どういう理由であるかは、ここでは書かないので、
実際に読んでみてください。

最後に、再読した感想を述べたいと思います。
学生のうちにしか読めないと思っていましたが、
社会人になってから読むと、また新しい発見がありました。
学生のときは、論理的な観点から、
思想を読み取ろうと、解読するような気持ちがありましたが、
今読むと、死を恐れず、自分の主張を堂々と演説する
ソクラテスに、心を動かされました。
この手の本は、学生でない限り、読まずにすませることが可能なのですが、
古典にふれずに一生を終えてしまうのは
もったいないように思います。
年末・年始と、長い休暇もありますので
ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

編集後記
大変、面白いお話でした。
「ソクラテス」という哲学者がいることは知っていましたが、
どういう人物なのかまでは知りませんでした。
ただなんとなく、何々をした人物だと言われても、大して興味を持てませんが、
面白いエピソードを絡めた話を聞くと、その人物についてもっと知りたくなりますね。

次号2008年01月07日の担当は宮下です。お楽しみに!

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