2007.06.15

情報システムの契約であいまいさを排除する

経済産業省の『情報システムの信頼性向上にための取引慣行・契約に関する研究会』モデル取引・契約書について検討結果を公表しました。
http://www.meti.go.jp/press/20070413002/20070413002.html

IT業界の多重構造、ユーザ/ベンダ間の責任範囲の不透明性や経営層・ユーザ部門とIT部門との利活用ギャップなどの、IT業界の取引構造・産業構造問題を転換し、「信頼性向上」「生産性向上」を目的としています。

今回公表されたモデル取引・契約書のポイントは3点あります。
1.システム構築のみならず、保守・運用を含むライフサイクルのマネジメントの実施。
2.ユーザ/ベンダが一体となった取り組みによる、文書による役割・責任分担の明確化。
3.契約・文書化による取引の可視化を推進し、信頼性・生産性の向上。

上記3点の取り組みを行い、社会インフラであるITの大規模トラブルやそれに伴う紛争の撲滅を目指しいます。

対象、前提は、以下の通りです。
大手企業と大手SIer
・ウォーターフォール開発
・重要インフラ/基幹システムの企画から保守まで
・共通フレーム2007によるプロセス
・一括発注、マルチベンダ、工程分割発注


『モデル取引・契約書』の作成過程では、次の5つの論点を基に、目指すべき方向性を提示しています。

1)フェーズの分類と契約類型
完成義務、瑕疵担保責任とユーザが主体になる/ベンダが主体となるフェーズを考慮し、超上流、システム・運用テストでは準委任契約、ソフトウェア設計製造テストは請負契約
運用・保守は準委任又は請負を理想形としています。

2)再委託のユーザ承認の要否
A)ユーザの承認は必要とする。B)ベンダに一任する。
一概にどちらが良いとは云えない。ただし、上記のいずれかを採用するのか、必ず契約で規定する。

3)損害賠償責任
A)民法の原則によるべき。B)契約で規定するべき。
双方でリスクの認識を一致させた上で、個別に決定することを薦めている。

4)著作権の帰属
A)ユーザに帰属させるべき。B)ベンダに帰属させるべき。
上記論点に対して、ベンダによる再利用できる環境を提供し、生産効率の向上や社会的のインフラとする観点もある。
ケースによるが、汎用的な利用が可能なプログラム等の著作権をベンダに帰属させる案を提示している。

5)第三者ソフトウェア・FOSSの利用
利用のおいては、瑕疵に起因するリスクと組み合わせに起因するリスクを掲げ、契約で規定することを提示している。


今後、上記前提を拡大した多様な契約形態を検討するようです。
また、政府調達での活用、信頼性評価指標への活用、紛争解決のADR、保険制度の創設などを検討しています。

個人的には、特に、下請取引、中小企業での活用を促進し、多重構造の転換を図る早急な取り組みが必要であると考えています。
また、自社での契約行為においても、利活用を考えています。

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