今週のアイロベックス

土佐弁講座

きびしい残暑、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
私は渋滞を避けるため一足お先に
一家そろって田舎の高知に帰省してきました。

子供が大きくなるにつれ、弟一家(高知在住)は
子供までそろって土佐弁バリバリなのに、
自分の子供が標準語(厳密には埼玉方言)を喋ることに
そこはかとない恥ずかしさを感じてしまいました。
思い起こせば、自分も人生の半分を関東で過ごしていて、
今では上京している同郷と話すのも標準語。
帰省しても地元モードに戻るのに少々時間がかかるようになってきており、
子供に土佐弁を伝えていないのも非常に情けないことです。


そこで、急きょ 土佐弁講座。

まずは<土佐弁らしい単語集>


<土佐弁の活用形>
動詞は次のように変化します。

例1)『食べる』
・現在・進行形
 タベユー(いま食べている。まだ残っている)
・現在・完了形
 タベチュー(食べて済んだ。もうない)
・過去・進行形
 タベヨッタ(食べていた。[のを見た])
・過去・完了形
 タベチョッタ(食べて済んでいた。[のを見た])

ただし「~ヨッタ」は、修飾の仕方によって
意味が全く変わってしまうので、文の前後に注意が必要です。
 コワイコト タベヨッタ(あやうく食べるところだった。[食べていない])
 コワイコト ゼンブ タベヨッタ(あやうく全部を食べるところだった。
[食べたが幾らか残っている])

・否定形
 タベン(食べない)
 タベンカッタ、タベラーッタ(食べなかった)
・推奨、命令形
 タベ(食べなさい)
 タベンナラン(食べなくてはいけない)
 タベナ(食べるな)
 タベラレン(食べてはいけない)
・他
 タベレル(食べることができる)
 タベレン(食べることができない)
 タベラス(食べさせる)
 タベラサン(食べさせない)
 タベチョク(食べておく)
 タベチャオ(食べてあげる)

例2)『来る』の活用形
 キユー(来ている。ing。未着)
 キチュー(来てしまっている。既にいる)
 キヨッタ(来ることをしていた。未着。しばらくすると到着するハズ)
 キチョッタ(一度は来ていた。[が今はいない])
 コン(来ない)
 コンカッタ(来なかった)
 キー(来なさい)
 コンナラン(来なくてはいけない)
 キナ(来るな)
 コラレン(来てはいけない)
 コレル(来ることができる)
 コレン(来ることができない)
 コラス(来させる)
 コサセン(来させない)
 キチョク(来ておく。[早めに])
 キチャオ(来てあげる)

例3)『する』の活用形
 シユー(している)
 シチュー(して済んでいる)
 シヨッタ(していた)
 シチョッタ(して済んでいた)
 セン(しない)
 センカッタ(しなかった)
 シー(しなさい)
 センナラン(しなくてはいけない。[~仕事])
 シナ(しなさんな)
 セラレン(してはいけない)
 シチョク(しておく)
 シチャオ(してあげる)


<文末のいろいろ>
文章の後ろに付く特徴的な表現があります。
・文接
 ~キ(ー) ~(~だから~):
 ムチャスルキ ワヤナッタワヤ(無茶をするからダメになったのです)
 ~ケンド ~(~けれども~):
 マイニチ アツイケンド ゲンキカエ(毎日暑いですが元気ですか?)
 ~タチ ~(~しても~):
 ユータチ キキャセンゼヨ(言っても聞きませんよ)
・文末
 ~ガ?(~ですか?):マダ ネンガ?(まだ寝ないのですか?)
 ~ロー?(~でしょう?):ソコニ アルロー?(そこにあるでしょう?)
 ~ヤ(~しなさい):
 コーチノ ジョウカニ キテミーヤ(高知の城下に来てみてください)
 ~ーセ(~してください):チクト マットーセ(ちょっと待っていてください)
 ~ニカーラン(~らしい):ルスニ カーラン(留守のようです)
 ~キ、~キニ(~のですから):マチユーキネ(待っていますからね)
 ~ト(~ということです):ミンナー イクトー(みんなが行く といっています)
 ~ゼヨ(です!):ワシャ イカンゼヨ(私は行きません)
 ~ネ(です、ですか?):
 ハヨウ ネンカネ。モウ ネルキネ(寝ないのですか。もう寝ます)

『~キ(ー) ~』と 前出の『~チュー(現在・完了形)』は比較的頻度が多く、
土佐弁を「サルとネズミの会話のようだ」と表現する人もいます。


<語尾のいろいろ>
単語の末尾に付く特徴的な表現があります。
 ~モツレ:ツチモツレ、ホコリモツレ(ツチ、ホコリまみれ)

 ~シ:ワリコトシ、シゴトシー(悪ガキ、働き者)
 ~ト:ヨクット(欲張り)オンシャ ショー ヨクットシー ニャー
    (あなたはとても欲張りですね)
 ~カ:テゴノカ(酔狂)テゴノカ イーナ(からかわないでください)

 ~モッテ:アルキモッテ(歩きながら)
 ~シナ:イキシナ、イニシナ(行きがけ、帰りがけ)
 ~ゴシ:カワゴシ、ビンゴシ(皮ごと、ビンごと)
 ~イル:ワライイッチュー、ヨミイッチュー(笑い、読みふける)

 ~イデ - カ:タベイデ イクカ(食べなくて済むわけがありません)
 ~ガー:エーガー トリヤ(好きなのを取りなさい)
 ~バー:エーバー タベヤ(好きなだけ食べなさい)

 ~ソー:シランソー シユー(しらないふりをしています)
 ~テ:コノテノ オオキイガハ アルカネ
    (これの大きい版はありますか? [like this])

なお、話し言葉では特に助詞を省略したり融合する傾向にあります。
 アメ フルニ カーラン(雨が降るようです)
 デンワ スルキネ(電話をしますからね)
 マダ メショ クイユーキニ(まだご飯を食べているところですから)


<強調表現>
特に会話では単語にくっ付いて強調表現する修飾の仕方があります。
 ~マクル:ヅキマクル、ステマクル(たいへん怒る、めちゃくちゃ捨てる)
 ~タクル、フミタクル(踏みまくる)
 ~マール:マギレマール(とても邪魔になる)
 ~クル:ユサクル(揺さぶる)
 ヘコ~:ヘコタスコイ、ヘコリクツ(とても弱い、すごいへリクツ)

 ~サガス(散らかす):イーサガス、タベサガス(言いふらす、食べ散らかす)
 ~クサス(中途半端):モエクサシ、タベクサシ(燃え残り、食べかけ)

 ~ガチガウ:サムイガ チガウ、エライガ チガウ(とても寒い、とてもすごい)


<ンによる強調>
単語によっては『ン』によって強調を表現することがあります。
 カンルイ(軽い)
 コンマイ、チンマイ(小さい)
 シンヨイ(簡単な)
 ヌンルイ(ぬるい)
 ヒンヤイ(冷たい)
 ヤンリコイ(やわらかい)
 マンルイ(丸い)


<強調、程度表現>
文章自体を強調したり程度の表現をする時に使う特徴的な単語があります。
 コジャント(ものすごく):コジャント フリユウ(ものすごく降っています)
 トット(とても[遠く]):マダ トット サキジャ(まだすごく遠くです)

 ヒトッツモ(ひとつも):ヒトッチャー ノマンノー(少しも飲みませんね)
 マーチット、マット(もう少し):マット クワイトーセ(もっと食べさせてください)
 ビット(少し):ビットバー ヤッタチイカンゼヨ(少しだけやってもダメですよ)
 チョッコリ(ちょっと):ホナ チョッコリ イテコーカネ
             (じゃちょっと行ってきてみましょうか)

 ヘンシモ(いそいで):ヘンシモ デンワ シチョキヤ
              (いそいで電話しておきなさい)
 モーマー(もうすぐ):モーマー オワラーヨ(もうすぐ終わるでしょう)
 ヤンダ(もうすぐ):モー ヤンダ モンテクラーヨ(もうすぐ戻ってきますよ)
 ヂキニ(すぐ):ヂキニ チャガマル(すぐにダメになる。[機械など])
 ゴトゴト(ゆっくり):ゴトゴト イキユーキネ(ゆっくり行っていますよ)
 コットリ(あっという間に):コットリ ネイッチュー(いきなり眠ってしまいました)

 オーノ、タマア、タマールカ、ショー、ゲニ、マッコト、ドダイ
 (単語自体に意味はないが、相づち等で使う)
 オーノ ソレガ ショー タマールカ ゲニ マッコト


<『ジ』と『ヂ』、『ズ』と『ヅ』>
高知の特に年よりは『ジ』と『ヂ』/『ズ』と『ヅ』を使い分けると
言われています。
 「ヂメン(地面)」、「ヂモト(地元)」
 「ヂキ(直)」
 「チュウジ(忠次:人名)」/「チュウヂ(忠治:人名)」
 「ミヅ(水)」
 「イズ(出ず:出ない)」/「イヅ(出づ:出る)」


<慣例文>
典型的な言い回しがあります。これが使えると一人前です。
 オーノ クツロイダ(終わってほっとした)
 タイソイ、ダレコケタ(とても疲れました)
 バッタリイッタ(失敗したー)
 ソレガ ドーナリャ(それじゃどうしようもないですね)
 テコニ アワン(割が合いません)
 ヨーセナネ(できませんよ)
 ヤクガ カカルニャー(手間がかかりますね)
 ザット シチュー(小馬鹿にしているなぁ)
 ワヤニ スナ(馬鹿にしないでください)
 ゾークソガ ワルイ(不愉快です)
 シャント シーヤ(ちゃんとしなさい)
 ナンチャージャナイ(なんでもありません。[you are welcome])

 ビービー イイナ(泣き喚かないでください)
 オーノ ゾイゾイスル(とても背筋がぞくぞくします)
 コシガ ジカジカ イタマーヨ(腰がちくちく痛みます)
 ハガ ズイズイスル(歯がズキズキします)

 カールニ カーラン(変わるようです)
 カーランニ カーラン(変わらないようです)
 カーッタニ カーラン(変わったようです)
 カーランカッタニ カーラン(変わらなかったようです)

 オンシャ ショー ノーガ ワルーナイカヨ(不便ではありませんか)
 ヘンシモ センチヘ イテキーヤ(急いでお手洗いに行ってきなさい)

なお、私の知っている土佐弁は 四万十町(旧窪川町)と
香南市(旧香我美町)のちゃんぽんで、かつ農業用語に偏っているので、
高知県全域で通用するものとは少々ずれがあるかもしれません。
ただ聞く分には、土佐弁は四国方言としてそれなり四国全域で
通用するようですので、慣れてみると便利かもしれませんよ。


  「ケンド コーチヘイクニャ
   サケ(≒トザヅル)ヲ ゴンゴーバーハ ノメント
   ヘコタスコイ イワレルゼヨ」

発音アクセントについてのお問い合わせはお近くの市川まで。


編集後記

「ヘンシモ センチヘ イテキーヤ」

普段使えるものばかりでしたね。

次号08月20日の担当は小原です。お楽しみに!

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