ビジネスで一番大切なこと ー消費者のこころを学ぶ授業ー

2011年4月18日  仕事一般  中津川

市場調査に基づかない「差別化戦略」。差別化は手段ではない。考え方だ。姿勢であり、取り組みであり、人とのかかわり方なのだ。重視し、尊重し、祝福できる方法で人とかかわることだ。


この本の著者は、「競争戦略論」で著名なマイケル・ポーターと並び、ハーバード・ビジネススクールで絶大な人気を誇る、女性経営学者ヤンミ・ムン氏。同氏が、市場が成熟した現代においてブランドについて、新しい概念を語る、意欲的な著書である。


経営者や、事業会社のマーケターは、「自社ブランド」について見つめ直す良い機会になると思う。

企業やマーケターは市場に製品を増殖させ続ける。どうでもいいような違いを強調する才に長け、類似性を差別化と称する技を持つようになる。細部に没頭するあまり、その主張が妥当性をもたなくなり始めているのにもきづかない。VOSSを訪ねたとき、社員たちが、同社の水は競合他社よりもおいしいと心底信じているのを知って、私はかなり驚いた。


※VOSSとは、ノルウェーの高級飲料水ブランドのこと
http://www.vosswater.com

著者は、私たちが陥っている「競争」の正体を、「均質化」であると述べている。



ポジショニングマップや市場調査に限らず、どんな分析手法にも言えることだが、自社の競争力を測るという前向きな努力が、結果的には均質化を促すムチになってしまう。


確かに、差別化戦略のための競合調査を行うと、まず目が行くのは、他社に劣っている点。このビハインドを埋めることで、他社に勝っている差別化ポイントが明確になる。と勘違いしている事が多い。

実際、私もそう考えていた。

しかし、市場が成熟している現代では、この様な思考から、均質化が進み、結局、ブランドAも、ブランドBも、ほとんど同じ。と受け止められてしまっているのである。

なぜ、この様なことになってしまうのか。


ジェフリー・ムーア「キャズム」によって有名になった、「イノベーション普及理論」では、市場を5つのセグメントに分類している。



  1. イノベーター

  2. アーリー・アダプター

  3. アーリー・マジョリティ

  4. レイト・マジョリティ

  5. ラガード

しかし、このセグメントは、あくまで「未成熟な市場から生まれた馴染みのない新製品が普及する過程」を分析する上でのセグメントである。


一方、成熟した市場においては、著者は、下記5つのセグメントを提案している。

(1)知識豊富な「カテゴリー通」

これは、いわゆる「家電芸人」、「おたく」と言われる様な人を指していると読み取れる。


(2)目ざとい「買い物上手」

いわゆるミーハー的な人を指していると読み取れる。


(3)関心の薄い「現実主義者」

習慣や価格、便利さなどに基づき購買を決定する、無関心な常連客と読み取れる。


(4)いやいや関わる「不本位な人々」

本には、しぶしぶかかわる消費者とあったが、必要に迫られた時に、何も考えずに購入する客ということかと思う。


(5)理屈抜きの「熱心な愛好家」

いわゆる、ロイヤルカスタマーの事であると読み取れる。


つまり、成熟した市場=多すぎる選択肢に対して、消費者がどの様に対応するかということである。


上述の分類を見ると、


特に家電量販店での出来事を想像して欲しい、

知識豊富な「カテゴリー通」が、


理屈抜きの「熱心な愛好家」を、


関心の薄い「現実主義者」に


変化させてしまっているという光景を、容易に想像できるのではないであろうか。


さて、本書では、この均質化の競争の群れから脱出する手段として、「アイデア・ブランド」となることを提唱している。

「アイデア・ブランド」には、Googleの様な「リバース・ブランド」、ソニーのAIBOの様な「ブレークアウェー・ブランド」、レッドブルの様な「ホスタイル・ブランド」がある。

本書では、それぞれ今までのブランドとの違いを記載していたが、私は読みながらも、ひとつ違う視点に気づいた。

それは、各ブランドともに、「人に話したくなる『こだわりの』ストーリー」があること。

私が本書を書いたのは、私たちはもっとうまくやれると考えるからだ。「もっと多く」を行うのではなく、自分たちがやっていることは何なのかを考える必要がある。

自分たちが本気で、本心で、消費者視点で、こだわっている偏りは、「しっかりとやり続けること」で、そして、「そのこだわりを発信しつづけること」で、多くの共感してもらえるお客様との出会いを作れるのだと、この本を読んで気づきました。

目次

序 棚に並ぶシリアルは、どれも同じに見える

第一部 私たちが陥っている「競争」の正体

 自覚はなくても、同じ方向を目指している

 よくしようという努力が、感覚を麻痺させる

 選ぶだけで大変すぎて、愛着どころではない

 競争の群れから抜け出すには


第二部 私たちの目を奪うアイデア・ブランド

 世の流れの逆を行く「リバース・ブランド」

 既存の分類を書き換える「ブレークアウェー・ブランド」

 高感度に背を向ける「ホスタイル・ブランド」

 ひと目でわかる違いを出せるか


第三部 私たちは、人間らしさに立ち返る

 生まれたてのアイデアには、呼吸する時間が必要

 私たちは、もっとうまくやれる

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ヤンミ・ムン
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