最近、iPadを愛用しています。紙の本も多く読んでいますが、仕事柄、朝早く夜遅いので、書店に行って本を買えません。
あまりネット通販で買うという行為は、好きではないのです。
書店に行くと、本との出会いがあります。本のタイトルに魅かれたり、ジャケットに魅かれたり、表装に魅かれたり、時には書店の手書きPOPに魅かれたり。
これは、本の著者での出会いであり、著者の人生哲学との出会いでもあります。人の出会いは一期一会。そんな一期一会を偶然、というか立命に頼りたいのです。
そんな私が、iPadで何気なく電子書籍を探していた際に出会えたのが、本書です。
ソフトバンク 孫社長の半生を描いた作品です。
会社としてのソフトバンクについて知りたい方、人としての孫社長を知りたい方はもちろん。会社経営や組織のリーダーで「熱い志」を持っている方や、仕事に忙殺されて忘れかけてしまいそうな方にも、自分の志を奮い立たせてくれるお勧めの一冊です。
本書では、孫社長の生い立ちについても詳しく書かれています。正直、自分の子供の頃を思い返しても、孫社長の様な人は周りにいなかった様に思います。
例えば、小学校でのエピソード
小学校の教室の壁一面にグラフが貼られている。ノート一ページ分の自習をすると、サクラのマークを一個付けてくれる。
それまで、ほとんどサクラのマークのなかった正義少年は、ある日どうやったらいちばん多く、サクラマークが壁にいっぱいに貼られるのかと考えた。
内容を問わず、なんでもいいから勉強すればサクラのマークを付けてくれると知った正義は必死に勉強した。
家族旅行にも行かず、ひたすらに勉強したそうです。目標に対して、我武者らに向かっていく姿勢は、子供の頃からあったことが伺われます。
また一方で、この様なことも書かれていました。
「私は小学校時代、多くのことを学びました。人を命令で従わせるのではなく、目的を共有しながら同志的に結びつくことも」
この様な姿勢が身に付いたのは、どうやら親からの教育と、育った環境の様です。
そうした創作的なことをする息子に対して、父の三憲はほめちぎった。
「おまえを見ていると、おれは途方もないことを考えるようになった」
父が言う。
「どういうこと?」
「ひょっとするとおまえは天才じゃないか」
父はつづけた
「日本で一番だ」
「おまえは大物になる」
子どもだましの程度を超えていた。親馬鹿の極到だ。
「うわ!」
うなり声を上げながら、全身でほめる。すると子どもはいつしか自分でもそうかもしれないと思い込むようになった。
自分はまだ子供がいないのですが、子供が生まれたら、ぜひ取り入れたいのはもちろん。会社や組織の部下や後輩、同僚に対しても、こういった姿勢は重要なのだと気づかされました。
また、10代で孫青年が作ったライフプランが、なんとも凄い。
「人生50か年計画」のライフプラン
どんなことがあっても20代で自分の事業を興す。名乗りを上げる。
30代で「最低1000億円の軍資金を貯める」。
40代、ここぞという一発勝負に出るー大きな事業に打って出る。
50代で、大事業を成功させる
60代で、次の経営者にバトンタッチする。
「一度しかない人生、公開したくない。思い切ってやろう。そのほうがずっとおもしろいではないか。人生の幕を閉じる瞬間、ああよかったと思えるような人生を生きたいと思った。」
こういった人生観を若いうちから持つということが、今の孫社長のベースを作っているのだとわかります。
そして、孫社長の伝説的なエピソード。
トタン屋根の会社。そこにリンゴ箱の演台をこしらえる。その上にのって、社員とアルバイトのふたりに熱っぽく語った。
「売上高、五年で100億、10年で500億」
「いずれは売上げは豆腐のように一丁(兆)、二丁(兆)と数えたい」
雇い主だからと思ってふたりの従業員は黙って聞いていた。だが、毎日聞かされたのではたまらない。
このエピソードを改めて知ると、2つの事に気づきました。
1つは、それだけの志を持ってビジネスに懸ける姿勢。この姿勢も、最初のスタート時に次の様な考えがあったからだと、理解することができました。
自分の決めた分野でナンバーワンになりたいと願った。孫はスタートにこだわっていた。どこからスタートするか。
「惰性で自分の人生を決めたくなかったのです。中途半端な妥協はしてはいけない」
選択肢はいくらでもある。すぐ思いつく分野からはじめたとしても、それでは10年もたてば、かならず頭打ちになる。そのたびに業種を変えなければならない。そういうことはしたくない。
孫はすぐさまノートをとった。大学時代に身についた方法である。頭に浮かんだことはなんでも書いておく。業種選びの条件、言ってみれば絶対条件を列記した。
儲けなければ事業をやる意味がない。
将来、業界が伸びていくと判断できるかどうか。
向こう50年間夢中になって打ち込めるか。
さほど大きな資本を必要としないこと。
若いからこそできるはずだ。
将来、かならず企業グループの中核になってみせる。
誰も思いつかないユニークなビジネスをめざす。
10年以内に少なくとも日本でトップになる。
事業成功のカギは、人を幸せにするという信念があればこそではないか。
20世紀後半から世界に飛躍できる。
もう一つは、自分の目標を、声を出して発表し続けることの重要性。思っているだけでは駄目で、行動、その一歩としての「目標を口に出して喋る」ことの重要性に、あらためて気づきました。
最近、「人生」について思い考える方がいれば、本書に書かれていた下記の文章が、何かの切っ掛けになるのではないでしょうか。
人生とは?
誰のために生きているのだろうか?
自分のため?家族のため?
それとも社員のため、顧客のため?
だが、もっともっと深く人生をいきられないか。
自分や家族のためだけでなく、広く世の中のためになることができないか。
一回きりの人生ではないか。
広く世の中のためになることをすることが、最大の目的でなくても構わないと思います。ただ、家族や社員、顧客のためと考えることが、既に「広く世の中のため」と言っていいのではと、個人的には考えました。
以下に、本書を読んで、心に留まったフレーズを記載しておきます。自分もこのフレーズを後で振り返り、自分の「志」を継続させる為の気力にしたいのです。
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「取引をするなら、うちと全部やってほしい」
「女と同じで、二股かけられたら相手に尽くす気にならないでしょう。相手を信頼し、そのことに賭けるからこそ尽くそうとするはずです。」
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計画はユニークな割り算でなければならない。
問題はあくまで結果なのである。ということは、最終的に全体としてどれだけやるかという計画を立てるべきなのでだ。
まず、一年間という期間を考える。その際、一年を十二か月で割ってはいけない。どんんあ綿密な計画を立てようと、かならず計画どおりにいくとは限らない。兄(孫正義)は十二ではなく十四で割る事を泰藏に教えた。つまり、二か月分、余りができる。
一週間も同じ。七で割るのではなくて、九ぐらいで割る。
そこに余裕が生まれ、仕事の能率も上がる。
一時間でできる仕事は10分くらいでやってのける。それができるかどうかを考える。
その計画を実行していく場合も孫はきわめて緻密である。
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ゲームズ好きな兄の正義は、弟とスーパーマリオのゲームをしながら経営哲学を教えた。
キノコはどうやって取るのか。カメを飛び越えてうまくいけるか。
そこで、誰かに助けの手をもらったとしよう。ここに土管があり、ワープができるよと教えてもらう。どうしたら、苦労しないで四面にいけるかを教えてもらう。
だが、それでは自分でゲームをしていてもおもしろいだろうか。
一面をクリアし、モンスターを倒し、二面にいく。難しくなる。二面からさらに三面に。
ビジネスもスーパーマリオのゲームと同じだと兄正義は言うのだ。ひとつひとつ、自分で道を拓いてゆくことが大切なのだ。
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創業者型の経営者というものは、縮小均衡のあとに成長シナリオを描いて、もう一度、国全体を拡大均衡に引っ張り直すことだ。
「そうでなきゃ、暗いぞ、つまらないぞ、悲しいぞ。真のリーダー、真の船長というのは、みんなに相談して行き先を決めるものじゃない。もう沈没しそうであとがないのなら、船員を少々ぶん殴ってでも、マストの1本や2本、ノコギリで切り倒したとしても、言うことを聞かんやつについては『じゃあ、おまえ、船から飛び下りろ、ボケ』と言ってでも、船に乗った残りの人間を、残りの大多数の人を、ちゃんと大陸に送り届けなくちゃいけないんだ」
これが孫の言うリーダーシップ、すなわち先を見る力、先見力である。
(中略)
「多少、右往左往があろうが関係ない。とにかくたどり着くことだ。要は拡大均衡にもう一度引っ張れる力。見た目の優しさというのも、ぼくには言わせてみればしようもないこと。人気取りは何もならん」
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「もっとも重要な三つのこと。一番目が志と理念。二番目がビジョン。三番目が戦略です」
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「ひょっとしたらやれるのではないか。一位になった、一回でも金メダルをとったら、またとれるかもしれないと思う。自信が出てくる」
これがもっとも大事なことだと孫は強調する。
「考えてみてください。社員、販売店の店員、ユーザーさんも、自分たちが沈みゆく船に乗っているのか、朝日のごとく昇っていく船の乗客や乗組員なのか、思い当たるはず。そう考えれば、一回の勝ちで活力がまるでちがうものになる」
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「なにごとにも困難はあるものですよ。どんな一流のスポーツ選手でも、怪我をすることもある。しかし、彼らにはそれを乗り越えていける気力と底力、自信がある」
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「人一倍、手堅いと思います。でも、橋を渡ると決めたらダンプカーで進む」
最後に、私もこの思いは共通です。
「日本はかならず世界一になれる」
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